☆久し振りの休みなので、都内に出て、都内でしか見られない作品を観た。
・・・ナチスが政権を奪取した時代のドイツ。
ヒトラー政権に解せない思いを抱いていた大学教授 ジョン・ハルダーは、帰宅しても、精神を病んだ妻や、ボケの始まった母親、幼い娘・息子との生活に疲れつつ、
慕ってくれる学生のアンや、明るい親友であるユダヤ人精神科医モーリス(ジェイソン・アイザックス)との交流で息を抜いている日々・・・。
だが、自分の書いた、「愛するが故に殺す」ことがテーマの小説が、ヒトラーの目に留まり、ナチス党から、「人道的な死」に関する論文を依頼され、その抜擢の中、入党を余儀なくされ、名誉親衛隊とされてゆく。
時は、次第にユダヤ人への迫害が、ドイツ国内では厳しくなっていく時勢、
入党の見返りとしての大学での昇進とともに、妻ヘレンとは離婚、病弱の母親を遠く実家に戻し、
若く美しいアン(ジョディ・ウィッテカー)との生活に入っていく。
徐々に、徐々にであったユダヤ人迫害は、パリの外交官のユダヤ人による殺傷によって、表面張力でこぼれることのなかったコップから水が一気にあふれ出すように、ドイツ国内で決定的な事項となり、モーリスもまた強制収容所へ送られていくのだった。
モーリスは、それまでも、自分の境遇への不安感をジョンに語り、助けを求めていたのだが、所詮は、ナチスの名誉親衛隊に過ぎないジョンは力になれず、
ナチスの為していることを知ってか知らずか、自分の実生活(特に親友のモーリスとの関係)において、感情との乖離をしていて、ただ状況に流されて生きていくのだった。
時折、ジョンの良心は、ジョンに、周囲の者たちの「歌い聞かせ」として幻影を見せる(ちょいとミュージカル風)。
主演のヴィゴ・モーテンセンの演技は申し分ない。
私は、この作品の邦題「善き人」や、原題の「GOOD」は、当然 皮肉としか感じられず、
この作品は、「人間失格」の如き、色々と考えてはいるが、所詮は「流される」「流され続ける」男の一生として見た。
その点においては、結局は上っ面の生き方しかできなかったジョンを演じたヴィゴ・モーテンセンの、その境遇に理解は出来るも、だからと言って、私に、その生活に流れるを認め難いと思わせるような人物像の造形は、非常にうまいと思った。
私は、もっとあざとく、こちらの心を抉る展開なのだと思って鑑賞に挑んだのだが、
戦時中のドイツの舞台設定の数々は見事で、なかなかの制作費が掛かっていると思われるのだが、
物語は、至って、ジョン個人の周囲に終始し、そこでの、時代の中、全てがマイナスに作用してしまう人間関係(ジョンと、母親、ヘレン、モーリス、アンら、それぞれ)が丹念に描かれるだけだが、
時代の定点観測としては素晴らしい出来だ。
そして、そんな関係の一人、モーリスとの関係が、時代の暗黒面(強制収容所=虐殺工場)への突入を余儀なくされた時、
ジョンは、ナチス親衛隊の軍服でもって、強制収容所の中、変わり果てたモーリスを見、栄養失調でバタバタと倒れるユダヤ人を見、連行され、身包み剥がされるユダヤ人家族たちを見、
焼却炉の煙突から伸びる黒い煙の中、ただひたすらに、ただひたすらに、途方に暮れるしかないのだった・・・。
(2012/01/04)
・・・ナチスが政権を奪取した時代のドイツ。
ヒトラー政権に解せない思いを抱いていた大学教授 ジョン・ハルダーは、帰宅しても、精神を病んだ妻や、ボケの始まった母親、幼い娘・息子との生活に疲れつつ、
慕ってくれる学生のアンや、明るい親友であるユダヤ人精神科医モーリス(ジェイソン・アイザックス)との交流で息を抜いている日々・・・。
だが、自分の書いた、「愛するが故に殺す」ことがテーマの小説が、ヒトラーの目に留まり、ナチス党から、「人道的な死」に関する論文を依頼され、その抜擢の中、入党を余儀なくされ、名誉親衛隊とされてゆく。
時は、次第にユダヤ人への迫害が、ドイツ国内では厳しくなっていく時勢、
入党の見返りとしての大学での昇進とともに、妻ヘレンとは離婚、病弱の母親を遠く実家に戻し、
若く美しいアン(ジョディ・ウィッテカー)との生活に入っていく。
徐々に、徐々にであったユダヤ人迫害は、パリの外交官のユダヤ人による殺傷によって、表面張力でこぼれることのなかったコップから水が一気にあふれ出すように、ドイツ国内で決定的な事項となり、モーリスもまた強制収容所へ送られていくのだった。
モーリスは、それまでも、自分の境遇への不安感をジョンに語り、助けを求めていたのだが、所詮は、ナチスの名誉親衛隊に過ぎないジョンは力になれず、
ナチスの為していることを知ってか知らずか、自分の実生活(特に親友のモーリスとの関係)において、感情との乖離をしていて、ただ状況に流されて生きていくのだった。
時折、ジョンの良心は、ジョンに、周囲の者たちの「歌い聞かせ」として幻影を見せる(ちょいとミュージカル風)。
主演のヴィゴ・モーテンセンの演技は申し分ない。
私は、この作品の邦題「善き人」や、原題の「GOOD」は、当然 皮肉としか感じられず、
この作品は、「人間失格」の如き、色々と考えてはいるが、所詮は「流される」「流され続ける」男の一生として見た。
その点においては、結局は上っ面の生き方しかできなかったジョンを演じたヴィゴ・モーテンセンの、その境遇に理解は出来るも、だからと言って、私に、その生活に流れるを認め難いと思わせるような人物像の造形は、非常にうまいと思った。
私は、もっとあざとく、こちらの心を抉る展開なのだと思って鑑賞に挑んだのだが、
戦時中のドイツの舞台設定の数々は見事で、なかなかの制作費が掛かっていると思われるのだが、
物語は、至って、ジョン個人の周囲に終始し、そこでの、時代の中、全てがマイナスに作用してしまう人間関係(ジョンと、母親、ヘレン、モーリス、アンら、それぞれ)が丹念に描かれるだけだが、
時代の定点観測としては素晴らしい出来だ。
そして、そんな関係の一人、モーリスとの関係が、時代の暗黒面(強制収容所=虐殺工場)への突入を余儀なくされた時、
ジョンは、ナチス親衛隊の軍服でもって、強制収容所の中、変わり果てたモーリスを見、栄養失調でバタバタと倒れるユダヤ人を見、連行され、身包み剥がされるユダヤ人家族たちを見、
焼却炉の煙突から伸びる黒い煙の中、ただひたすらに、ただひたすらに、途方に暮れるしかないのだった・・・。
(2012/01/04)