☆・・・私は、ヒーロー物は、ちょっと非現実離れした話のほうが好きだ。
だから、ヒーローがリアルに悩むのはほどほどのほうがいい。
作品の完成度については置いといて、
クリストファー・ノーラン版よりもティム・バートンのバットマンのほうが好きで、
ダニエル・クレイグよりも、そうだな、先に亡くなったロジャー・ムーアの007のほうが「らしい」と思っている。
ゆえに、シビアな展開の、この作品にはそれほど乗れなかった。
『ローガン』は、XーMENの「ウルヴァリン」が、ミュータント衰退期に生きる、ミュータント(突然変異の超能力をもった人類)にとって荒廃した世界の物語。
もはや、世界の危機を救うなどという名目は存在していない。
無敵を誇ったウルヴァリンも、その能力に衰えが見え、新世代のミュータントは生まれなくなっていた。
ウルヴァリンは名前を変え、アル中のタクシードライバーだ。
やさぐれている。
ボケのはじまったチャールズと、誰にも迷惑をかけない海での生活を夢み、大型クルーザーを買おうと貯金に精出す毎日。
なんとも、私、その現実の押し寄せる感じに『劇画 オバQ』を思い出した。
この話は、「強化人間」たるミュータントの少女の自由への逃避行を、ローガンが手助けする物語。
少女とローガンの間には、親子関係も生まれ(ヒュー・ジャックマンは『リアル・スティール』で同テーマをやっているが、今回は少女版^^;)、また、人を殺した者の宿命なども、作中で引用される『シェーン』などを通して語られるし、メキシコからカナダへの道行きの風景は、この作品が西部劇を目指しているのが分かる。
ウルヴァリンの血を受け継ぐ少女ローラは、これ見よがしではないが、さりげなくもヒットガール(『キック・アス』)を越えた動きを見せ、
ローラの能力を狙う組織は、『マッドマックス』的にローガンらを追い続ける。
約束の地のウルヴァリンは、まさに、『マッドマックス:サンダードーム』を踏襲し、
最終的には、超能力者の悲劇『七瀬 ふたたび』の如く、ローガンは「七瀬 森を走る」ことになる(カジノで金策しようとする設定も同じだ)。
私は別に、パクっているとか言いたいわけではなく、作品名を出すと想像しやすいのではないかと既存の作品名を挙げている。
物語ってのは、ある一定の展開において重複するものである。
無意識のリスペクトもあるだろうし。
完成度は高く、イーストウッドの作品を思わせる出来^^
(2017/06/01)