☆「聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―」を観た。
これまた、作品としては、非常に抑制の効いた良作であった。
手触りとして、スティーブン・ソダーバーグ監督の諸作品みたいな、ドラマチック性を排除した作りだ。
日本の戦争映画は、妙に激情に任せるきらいがあるが、この作品は淡々としていた。
何故、余裕ある淡々とした話運びが出来ているのか?
・・・それは、邦画が、CG技術の向上によって、絵的に臨場感を出せるようになったので、過剰な感情の発露を行わなくて良くなったからだろう。
NHKスペシャル大河「坂の上の雲」においての日本海海戦の描写の重厚さにも驚いたものだが、この作品での連合艦隊のリアルさにも、作り物としての違和感が全く起こらなかった。
原作が半藤一利とのことで、海軍善玉史観に彩られていたが、まあ、「いかなる戦争も反対」と言った条件反射左翼に、戦争の異なる視点を提供する点でいいテキストになろう。
また、断片的には知っているが、山本五十六と言う人物の「通史」を、一つの完成形として、かっちりと見せてくれる点で、非常に面白かった。
山本五十六は、アメリカとの戦争には反対していたが、運命の巡り合わせで、自分がその戦端を開くことになってしまう。
軍人であり、長官であり、組織の中の一人であり、甘党であり、父親である。
色んな役割の中で、その誠実な人柄を垣間見せる。
そして、この作品で特筆なのが、とにかく、山本五十六の食べるシーンが多いことだ。
焼いた鰯やら、水饅頭やら、カレイの煮付け、おしんこ、味噌汁、煮物、茶漬け、スイカ、干し芋、干し柿、お汁粉、お茶漬け・・・。
そのシーン、そのシーンでのテーマを、山本五十六が黙々と食べることによって消化(昇華)していく。
けして、極上のものばかりではないが、その食事シーンへのこだわりは、「おくりびと」を思い出させるし、
静かな食事のシーンの底辺に、激しい感情が隠されている演出は、「北の国から 夏」の有名なラーメン屋のシーンを髣髴とさせる。
脇を固める、阿部寛や椎名桔平、吉田栄作、中原丈雄、中村育ニ、香川照之(←もろ朝日新聞のスタンスを演じていた^^;)らも良い演技をしていたが、
やはり、山本五十六を演じた役所広司が良かったなぁ。
失敗や敗北、部下の戦死の報を聞いた後の「静のリアクション」は、派手な戦争描写よりも興味深かった。
最初、役所広司が山本五十六役を演じると聞き、顔があまりにも違う…、などと思ったものだが、終盤では、役所広司が山本五十六にしか見えなくなっていた^^;
役所広司の演技は、わりと、どんな役をやっても同じなんだけど、妙に役のほうを取り込んでしまうんだよな。
◇
ただ、この作品、山本五十六だけが神格化されているが、
スポーツでも仕事でも良いが、人の上に立つ立場を経験したものならば、例えば、南雲忠一との確執などにおける、結果としての「コミュニケーション不全」があることに気づくと思う。
それは、やむを得ぬことであったかも知れないが、本当に神格化されるべきものなれば、そこさえも乗り越えて欲しかった・・・。
・・・えっ、私? 私は、そう言った人間関係を解きほぐすのが面倒なので、リーダー業から足を洗ったのだ^^;
(2011/12/27)
これまた、作品としては、非常に抑制の効いた良作であった。
手触りとして、スティーブン・ソダーバーグ監督の諸作品みたいな、ドラマチック性を排除した作りだ。
日本の戦争映画は、妙に激情に任せるきらいがあるが、この作品は淡々としていた。
何故、余裕ある淡々とした話運びが出来ているのか?
・・・それは、邦画が、CG技術の向上によって、絵的に臨場感を出せるようになったので、過剰な感情の発露を行わなくて良くなったからだろう。
NHKスペシャル大河「坂の上の雲」においての日本海海戦の描写の重厚さにも驚いたものだが、この作品での連合艦隊のリアルさにも、作り物としての違和感が全く起こらなかった。
原作が半藤一利とのことで、海軍善玉史観に彩られていたが、まあ、「いかなる戦争も反対」と言った条件反射左翼に、戦争の異なる視点を提供する点でいいテキストになろう。
また、断片的には知っているが、山本五十六と言う人物の「通史」を、一つの完成形として、かっちりと見せてくれる点で、非常に面白かった。
山本五十六は、アメリカとの戦争には反対していたが、運命の巡り合わせで、自分がその戦端を開くことになってしまう。
軍人であり、長官であり、組織の中の一人であり、甘党であり、父親である。
色んな役割の中で、その誠実な人柄を垣間見せる。
そして、この作品で特筆なのが、とにかく、山本五十六の食べるシーンが多いことだ。
焼いた鰯やら、水饅頭やら、カレイの煮付け、おしんこ、味噌汁、煮物、茶漬け、スイカ、干し芋、干し柿、お汁粉、お茶漬け・・・。
そのシーン、そのシーンでのテーマを、山本五十六が黙々と食べることによって消化(昇華)していく。
けして、極上のものばかりではないが、その食事シーンへのこだわりは、「おくりびと」を思い出させるし、
静かな食事のシーンの底辺に、激しい感情が隠されている演出は、「北の国から 夏」の有名なラーメン屋のシーンを髣髴とさせる。
脇を固める、阿部寛や椎名桔平、吉田栄作、中原丈雄、中村育ニ、香川照之(←もろ朝日新聞のスタンスを演じていた^^;)らも良い演技をしていたが、
やはり、山本五十六を演じた役所広司が良かったなぁ。
失敗や敗北、部下の戦死の報を聞いた後の「静のリアクション」は、派手な戦争描写よりも興味深かった。
最初、役所広司が山本五十六役を演じると聞き、顔があまりにも違う…、などと思ったものだが、終盤では、役所広司が山本五十六にしか見えなくなっていた^^;
役所広司の演技は、わりと、どんな役をやっても同じなんだけど、妙に役のほうを取り込んでしまうんだよな。
◇
ただ、この作品、山本五十六だけが神格化されているが、
スポーツでも仕事でも良いが、人の上に立つ立場を経験したものならば、例えば、南雲忠一との確執などにおける、結果としての「コミュニケーション不全」があることに気づくと思う。
それは、やむを得ぬことであったかも知れないが、本当に神格化されるべきものなれば、そこさえも乗り越えて欲しかった・・・。
・・・えっ、私? 私は、そう言った人間関係を解きほぐすのが面倒なので、リーダー業から足を洗ったのだ^^;
(2011/12/27)