☆・・・まだまだ若かったが・・・。
◇ ◇ ◇
<映画『わたし出すわ』を観た>(2009/10/31)
久し振りに、森田芳光節を見たような気がした。
森田監督は、本来、このような、掴みどころのない、不思議な、すっとぼけた味わいの作風だった。
私は、彼が新進気鋭で現われた頃、映画に夢中になり始めた。
だから、森田監督の初期の作品は大好きだ。
『ときめきに死す』なんか素晴らしいが、もちろん『家族ゲーム』『それから』も捨て難い。
こちらの投稿を読んでみてくれないか?
[真夏の洗礼(旅は短くも不意に訪れる・・・)]
これなど、私は、ずっと『の・ようなもの』の後半の道中を意識していた^^;
・・・それはさておき、『わたし出すわ』の作風に、
私は、「森田・イズ・バック!」の思いを強くした。
◇
主演は小雪である。
私は、小雪に、どうしても女性的な魅力を感じられないで困っているのだが、その小雪が、東京から函館に帰ってきたマヤを演じる。
マヤは、小雪らしい質素ないでたちながら、かつての同級生に会うと、その同級生の金銭的な問題に、「わたし出すわ」と大金を提供してくれるのだった。
そんなマヤと、5人の同級生、それぞれの置かれている状況が平行して語られていく。
マヤが何故に大金を持っているのか?
それは謎なのだが、物語の終盤には次第に何となく分かってくる。
だが、そんな物語の終盤に入ると、マヤの、かつての同級生から見た空白の日々などはどうでもよくなっていて、
要は、マヤが淡々と故郷での「お礼参り」をしていくことによる函館の人間模様が主題として浮かんできている。
堅実な路面電車運転手と、あまりにも俗だが可愛い妻。
外界に飛び出て戦うよりも、勝手知ったる街でナンバー1に甘んじる女。
ちょっとした権力指向の旦那を持つ(箱庭協会会長になりたい)、愛犬の死に涙を流す女。
高校の頃から、陸上に専心し、卒業後も、郷土の企業の陸上部で走り続けている男。
北海道の海を眺め、その魚類の特性を研究し続けている女好きな男。
全く別個の道を進んでいる仲間が、函館と言う街を多角的に見せてくれる。
また、物語の枝葉には、なぜか「ワールド・ワイド」なスパイスが効いてもいる。
主人公の台詞は少なく、そこには静かな空気が流れている。
そのゆったりとした時間の流れを醸す映像には、なぜか、清潔感のある幾何学模様的な直線が意識させられる。
マヤの部屋や、マヤの母親の病室などにそれが顕著である。
それで、画面にはアクションがなくとも、何とも惹きつけられるのだった。
◇
マヤの「お礼」は、かつての同級生たちの取るに足らない一言に由来していた。
美人だが、おそらく引っ込み思案で、謙虚だったマヤは、その相手が、自分に向けてくれた言葉など覚えていないと思っていた。
しかし、その相手は、ちゃんと覚えているのだった。
マヤの頬は、感動で紅潮するのだった。
◇
引越し屋さんのエピソードや、寝たきりで意識不明だった母親のエピソードも、エンディングで、静かに着実な感動を与えてくれる。
なんか不思議なテンポの作品であるが、非常に面白かった。
・・・ただ、何やら作中で暗躍していた中村トオルが、
ラストシーン、母親の車椅子を押すマヤを、遠くから見つめているのが物語的に不相応な気がした。
(2009/10/31)
◇ ◇ ◇
テレビでお葬式の風景を見ていたら、こうして再掲したくなった。
ご冥福をお祈りします。
(2011/12/25)
◇ ◇ ◇
<映画『わたし出すわ』を観た>(2009/10/31)
久し振りに、森田芳光節を見たような気がした。
森田監督は、本来、このような、掴みどころのない、不思議な、すっとぼけた味わいの作風だった。
私は、彼が新進気鋭で現われた頃、映画に夢中になり始めた。
だから、森田監督の初期の作品は大好きだ。
『ときめきに死す』なんか素晴らしいが、もちろん『家族ゲーム』『それから』も捨て難い。
こちらの投稿を読んでみてくれないか?
[真夏の洗礼(旅は短くも不意に訪れる・・・)]
これなど、私は、ずっと『の・ようなもの』の後半の道中を意識していた^^;
・・・それはさておき、『わたし出すわ』の作風に、
私は、「森田・イズ・バック!」の思いを強くした。
◇
主演は小雪である。
私は、小雪に、どうしても女性的な魅力を感じられないで困っているのだが、その小雪が、東京から函館に帰ってきたマヤを演じる。
マヤは、小雪らしい質素ないでたちながら、かつての同級生に会うと、その同級生の金銭的な問題に、「わたし出すわ」と大金を提供してくれるのだった。
そんなマヤと、5人の同級生、それぞれの置かれている状況が平行して語られていく。
マヤが何故に大金を持っているのか?
それは謎なのだが、物語の終盤には次第に何となく分かってくる。
だが、そんな物語の終盤に入ると、マヤの、かつての同級生から見た空白の日々などはどうでもよくなっていて、
要は、マヤが淡々と故郷での「お礼参り」をしていくことによる函館の人間模様が主題として浮かんできている。
堅実な路面電車運転手と、あまりにも俗だが可愛い妻。
外界に飛び出て戦うよりも、勝手知ったる街でナンバー1に甘んじる女。
ちょっとした権力指向の旦那を持つ(箱庭協会会長になりたい)、愛犬の死に涙を流す女。
高校の頃から、陸上に専心し、卒業後も、郷土の企業の陸上部で走り続けている男。
北海道の海を眺め、その魚類の特性を研究し続けている女好きな男。
全く別個の道を進んでいる仲間が、函館と言う街を多角的に見せてくれる。
また、物語の枝葉には、なぜか「ワールド・ワイド」なスパイスが効いてもいる。
主人公の台詞は少なく、そこには静かな空気が流れている。
そのゆったりとした時間の流れを醸す映像には、なぜか、清潔感のある幾何学模様的な直線が意識させられる。
マヤの部屋や、マヤの母親の病室などにそれが顕著である。
それで、画面にはアクションがなくとも、何とも惹きつけられるのだった。
◇
マヤの「お礼」は、かつての同級生たちの取るに足らない一言に由来していた。
美人だが、おそらく引っ込み思案で、謙虚だったマヤは、その相手が、自分に向けてくれた言葉など覚えていないと思っていた。
しかし、その相手は、ちゃんと覚えているのだった。
マヤの頬は、感動で紅潮するのだった。
◇
引越し屋さんのエピソードや、寝たきりで意識不明だった母親のエピソードも、エンディングで、静かに着実な感動を与えてくれる。
なんか不思議なテンポの作品であるが、非常に面白かった。
・・・ただ、何やら作中で暗躍していた中村トオルが、
ラストシーン、母親の車椅子を押すマヤを、遠くから見つめているのが物語的に不相応な気がした。
(2009/10/31)
◇ ◇ ◇
テレビでお葬式の風景を見ていたら、こうして再掲したくなった。
ご冥福をお祈りします。
(2011/12/25)