☆・・・総合的に判断すると面白い作品であった。
例えば、ロッククライミングのシーンがある。
見ているこちらは快適な椅子に座り、そのシーンに、どうしても客観的にならざるを得ない。
だが、この作品での臨場感は、かなり見ている者へ、その体験として肉薄してくる。
高さが恐い。
例えば、ウイングスーツで空中滑空するシーンなどでは、スピードが怖い。
そう感じさせるのが見事なのである。
しかし、個々のアクションを統合させる物語は歪である。
理屈はあるのだが、あまりにもアクションを箇条書きしたような印象を拭えない。
この作品は、キャスリン・ビグロー監督作品『ハートブルー』のリメイクであるが、その作品でも、私は、同じような何とも言えないアンバランスを感じた。
しかし、ビグロー監督作品には、それを補って余りある「情念」があった。
後に『ハートロッカー』や『ゼロ・ダーク・サーティー(私的には傑作!!)』で巨匠となる女流のビグロー監督だが、初期の作品は『ブルースティール』と言い、突出した「情念」の噴出があった。
しかし、残念ながら、この『X-ミッション』には、それがなかった。
今作の主人公は悪くなかったが、オリジナルのキアヌ・リーブスやパトリック・スウェイジの、カリスマにも似た個性には遠く及ばない。
(2016/02/22)