☆こりゃ、なかなか面白かったどすえ。
私、ダーレン・アロノフスキー監督は、『レスラー』『ブラック・スワン』と見てきて、かなりの激しい物語で圧倒されつつも、その二作があまりにも似通っているので、1激情テーマ型の作り手なのだと思い、「もうお腹いっぱいで結構だ」などと考えていた。
だが、この作品、テーマ性は同じながらも、誰もが知っていて良くは知らない「ノアの箱舟」を新解釈で、やはり、ノアに激情の苦悩を持ち込んでいて、更には、「ロード・オブ・ザ・リング」的なファンタジー要素も感じられる盛り沢山ながらも、ちゃんと整理がされている良作となっていた。
一部に、この作で描かれるノアの姿が、あまりにも神の教え以外に対し非情なので、賛否両論あるらしい。
そもそもが、聖書は、説明不足の書でもあり、聖書だけに限らないが、世の聖人とは「神の言葉の解釈権を得た者」であるからして、ノアが狂信的に、自分の感じた神の教えを進めていこうとするのは納得もできる。
私の親は明治大学を出ていて、キリスト教を勉強したので、私に、聖書からとった「ヨシュア」と言う名をもじった名前を付けた。
このヨシュアなどは、キリスト教では聖人だが、他の異教の民を虐殺しまくった織田信長の様な恐ろしい人物だった・・・。
そして、私たちは、ノアに対し、「エホヴァの証人」や「連合赤軍」的な雰囲気を感じるし、だが、更にはそこに、ダーレン・アロノフスキーの情念が健在であることを知る。
大洪水までは、現世界からの脱出と言う方向性があったのだが、箱船に舞台が限定されてからは、「羅生門」的な、幾つもの正義が示される。
それが、誰が正しいとも言えないのである。
箱船を乗っ取ろうとした時の権力者・カインがいて、自分以外はおろか、自分らさえも消滅し完結する神の計画を進めるノアを殺そうとする。
このカイン、けして間違っていないのである。
だが、一言で、世の全てを「自分のエゴ」でまとめようとしたことが分かり、観客の共感を得られない。
また、カインが支配していた世界は、ソドムとゴモラ的な状況に堕ちてもいた。
対して、ノアは、助けられる者たちの叫びを無視し、多くの助けられるかもしれない命を無駄にし、自分の解釈による神の啓示を遂行しようとする。
しかし、消滅すべき自分らの一族に、女の赤ちゃんが生まれたことを知り、それを殺めなくては、一族の命脈を永続させてしまうことを知りつつ、自分の考えるところの神の計画に対し、「赤ちゃんを見たとき、心に愛しかなかった・・・」との一言で、我々観客の共感を掴むのである^^;
でもね、私は良かったよ。
下手すると、この監督、赤ちゃんを殺して物語を終えようとしそうなんだもん^^;
つがい・・・、神と人と・・・、ノアかカインか・・・、信仰と情愛・・・、セムかハムか・・・、天使と堕天使・・・、・・・と、多くの、安易には答えの出せない二者択一の嵐の中で、最近では珍しいノアの父性に関心はした。
また、作中で、天地創造がダイジェスト的に語られたのは得した気分でした。
ハーマイオニーは、相変わらず、尖った顔してました^^;
(2014/06/13)