☆・・・「なんで、あなたって人は、私の嫌な思い出を聞いて、嬉しそうに大笑いするのよ!!」
「俺は、なんちゅうか、そんな物語が大好きなんだよ?」
「物語・・・?(私の辛い過去の話を作り話だとでも思っているのかしら)」
「・・・いや、そういう意味でなくて、流れある話・・・、物語と言っちゃいけないんだよな。・・・うん、そう、エピソードが大好きなんで」
「・・・エピソード・・・」
「う〜、悪い意味じゃないんだよ。う〜ん、例えば、俺は、酔った凄いデブに足にゲロを吐きかけられたことがあってさ。同じく被害に遭った男は、泣いて怒っていたんだけど、俺は大笑いしちゃったんだよ。よくもまあ、このクソデブ、俺にゲロ吐きやがってよぉ、って」
「うんうん^^(←自分だけが悲惨でないことに安心する)」
「それからさ、カンボジアでは地雷原を歩いたし、南相馬の被災現場にも行った。カンボジアにも福島にも悲劇はあって、哀しい目に遭っている人はいるけど、それとは別次元で、その状況を経験するということは、非常に大事で、俺には興味深いんだよ。だから、梨華さんが、自分の貴重な経験を苦笑いしつつ語れるのは、物語として突き放して過去を見てられるってことだから、ウヒャヒャ、俺は笑うのさ!」
「そんなものですか・・・」
◇
・・・梨華は、三人の先輩に引っ立てられて、体育館裏のトイレに連れて行かれた。
もう、連れて行かれる理由などを問うことはせずに、これも運命と思い、おとなしく為すがままに連れて行かれるのだ。
・・・ああ、楽しいと思っていた高校生活も、また・・・、これかぁ・・・
梨華、涙も出なくなっていた。
薄暗いトイレに入ると、なんか、自分の人生では見慣れた光景、多くの先輩がひしめいていた。
女の「嫉妬」の臭いがムンムンと立ち込めていた。
15人はいただろう。
この高校は商業高校だった。
授業で習字の授業があった。
習字には、半紙の上部を抑える長細い文鎮が必要だ。
その文鎮が、本来の用途とは別に、梨華を待ち伏せていた先輩たちの手に握られ、それを複数が振り上げていた。
・・・これ、私、死ぬ・・・。
先輩たちは、いつもの通り、梨華を「生意気」だと糾弾しはじめ、土下座を強要する。
梨華は、おとなしく、トイレの床で土下座する。
先輩の一人が、トイレの蛇口を指で押さえ、水流を梨華に向けた。
バシャーッ!!
梨華、水が掛かるままに、頭を下げ続けた。
「分かったね、調子こくんじゃねーぞ!」
そして、一人づつ、床にうつ伏している梨華に蹴りをくれて出ていくのだった。
梨華は、その数をカウントしていた。
・・・21!
つまり、この狭いトイレには、21人もの先輩が集まって、梨華に呪詛の念を送り続けていたのだ。
◇
「そのグループはね、50人ぐらいいたの。でね、学校には、それとは別に、4人の子たちのグループがあったの。50人の方はブスばっかだったけど、4人の方は可愛い子たちばかりだったの」
「ほう」と、私は、話に光明が見えたと思った。「50人と対立したので、そのセレブ4人とは仲良くなったんだな^^ 捨てる神あらば拾う神あり、って感じだな」
「ううん・・・。どちらからも攻撃された・・・」
「・・・、・・・」
◇
通学中、先輩に会うと、梨華は丁寧に頭を下げるのだ。
「挨拶もしやがらねえ、生意気だ」と言われたので、挨拶をすることにしたのだ。
先輩は、必ず、頭を下げる梨華に蹴りを入れたり、パンチをくれたりしていった。
他の生徒は、普通に楽しそうに登校している。
梨華は思った。
これが続けば、私は、もう、学校に来れなくなる!
ならば・・・と、梨華は、ある決意をした・・・。
◇
♪どうして君は 小さな手で
傷を背負おうとするのだろう?
誰かの為だけじゃない 見失わないで
どうして僕は 迷いながら
逃げ出すこと出来ないのだろう?
望むのは光射す日を 日を…
♪FIND THE WAY
輝く宇宙(そら)に 手は届かなくても
響く愛だけ頼りに
進んだ道の先 光が見つかるから
YOU'LL FIND THE WAY
♪君は言った 永い夢をみた
とても哀しい夢だったと
それでもその姿は 少しも曇らない
僕は言った 泣いていいんだと
ずっと傍にいてあげるよ
欲しいのは 抱き上げる手を 手を…
♪FIND THE WAY
言葉なくても
飛ぶ翼(はね)はなくても
乱す風に負けぬ様に
今誰より早く 痛みに気付けたなら…
♪答えを出すこと きっとすべてじゃない
焦らなくて いいんだよ あなたも…
♪FIND THE WAY
輝く宇宙(そら)に 手は届かなくても
響く愛だけ頼りに
進んだ道の先 光が見つかるから
FIND THE WAY
言葉なくても
飛ぶ翼(はね)はなくても
乱す風に負けぬ様に
進んだ道の先 確かな光を見た…
YOU'LL FIND THE WAY
(2013/12/11)