☆不思議な映画であった。
日本人にとっては拘りどころの、先の大戦における天皇陛下の存在の意義だが、果たして、この作品を作ったアメリカ人にとって、如何ほどの興味があるのか、と言う問題がある。
そんなにも興味があるとは思えなかった。
日本人の民族的なメンタリティは、「日本に興味がある欧米人」と言うマイノリティにのみ効果があると思うのだ。
日本以外では、商業的に成り立つとは思えなかった。
話も、地味ではあった。
大時代を舞台にしているのだが、事後、マッカーサーの指示で「天皇に戦争責任はあるか・否か」の調査官に任命された知日家のフェラーズ准将(マシュー・フォックス)が、焼け野原の東京を捜査する物語である。
派手なドンパチはない。
地味ではある、が、ハードボイルド物語としては、見事に成立している。
戦火の中に消えた異国の恋人を想いつつ、米軍によって家族を失った男を助手とし、捜査は続く。
私的には、思考作業ではなく、とにかく「人にあたる」のがハードボイルドと考えているのだが、
挫折し、暴漢にボコられて、よたよたと歩き去るシーンなども含めて、ハードボイルドの王道をいっていると思う。
主人公の恋人が、回想の中でしか出てこない設定もいいし、演じる初音映莉子は、蒼井優にも似た繊細さに、欧米人の考える日本人的な凛々しさを兼ね備えていてよかった。
捜査の過程で、フェラーズ准将は、多くの、日本の中枢にいた男たちと出会っていくのだが、それぞれの人物に会い、それぞれの人間性に直面し、「日本人」への理解を深くしていく。
が、同時に、日本人の心の中心に据えられている「天皇」への謎は最大級に深まっていく。
フェラーズ准将はもとより、欧米人が、この問題に、最上級のテーマ性を求めたのが、私には不思議でたまらない、が、・・・日本人として、その興味は、ちょっと嬉しい。
最終的に、マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)は、自らが天皇へと面会することになる。
・・・このシーン、静かなシーンなのである。
しかし、私は、意外にも、ビシビシビシビシーッと、身体中に鳥肌が立つほどに興奮してしまった。
なんで、そんなにも興奮するかのかはわからない。
神聖とかカリスマなんて言葉では済ませられない。
「為すべきことを為し続ける存在」の姿に、私はこうべを垂れるしかない・・・。
(2013/07/29)