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Channel: 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭
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[古市憲寿著『絶対に挫折しない日本史』の感想]

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☆……よく資格試験に挑むときには、「過去問をとにかく解け!」などと言うが、私はそれには従わず、繰り返し参考書を読み、宅建に合格した。

 私は、どうやら「流れ」で物事を理解しないと頭に染み込まないタイプらしい。

 この「<流れ>でしか頭に定着しない」という問題については、そのうち、「集団を相手にした時の戦い方」や「(司馬遼太郎が語るところの)秋山真之の常なる視点」を紐解くことで語ってみたいなぁ、などと考えているがそれは別の機会で^^;

 ▼気になっていた古市憲寿著『絶対に挫折しない日本史』を読んだ。

 ブックオフで220円だったので、やっと手が出た。

 正直 かなり面白かった。

 歴史のターニングポイントを捉えつつ、ベーシックな通史(流れ)を語り、更に、また最初から、「コメ」「家族」「戦争」それぞれで歴史の「流れ」を繰り返す。

 ポイント指摘の新鮮な視点では、「おお、なるほどなぁ」と感心させられた。

 だが、おかしい点も多々ある。

 先ず、若い読者に分かりやすいように、マンガやアニメを引き合いに出すのだが、それが、おっさんの俺が読んでも、なんかズレている。

 いや、俺が「おっさん」だから理解できないのではない、まだまだ、俺はマンガ読みの感受性は持ち得ている。

 例を挙げる時間がないのだが、その引用箇所が明らかに適切でないのだ。

 ▼また、前書きで、「大事なことは何度も繰り返している」と書いている。

 何度も、「独裁」は「内戦(紛争・革命時など)」よりも被害者が少ないと書いている。

 独裁者でも、無政府状態よりはマシ、と書いている。

 何度も書いているので、かなり、この主張に自信があるらしい。

 塩野七生も、悪夢の民主党政権時、無政府状態を危惧し、それでも民主党を支持していたりしていた。

 長くなるので書かないけど、この「標語」に依存するのは間違いだ。

 内戦などは、独裁者の勃興期に起こるのである。

 そして、「戦争」の多くに、独裁者が絡んでいる。

 特に、現在の先進国では、この「標語」が当てはまらないほど、歴史は変わってきている(左翼みたく「進歩」という言葉は使わないが^^;)。

 そもそも、社会学者と言うのが、いまいち胡散臭い学問ではあるのだが、この場合 欠けている視点を、私は指摘しているわけだ。

 ▼それをそのままに鵜呑みにするのもアレなのだが、仮に、失われた命の数が、無政府状態よりも、「悪の独裁者(組織)」の政権下のほうが少なかったとする。

 でも、政体の是非を、「命の数」で計るのがそもそも大きな間違い。

 ▽例えば、中国共産党のもと、ウイグルでは、数百万の住民が、虐待され、強制労働され、思想を封じられている。

 命こそは奪われていない状態……(無論、別個に虐殺はシステマチックに行われている)。

 私は、この「心を殺された状態」の罪悪を「命を失う状態」とイコールと考える。

 すると、「悪の独裁者(組織)」によって引き起こされる「被害」は、古今比類なき数値になる。

 ▽よく、「いじめ」によって起こる事件は、結果としての「死」がどうしてもクローズアップされ、それは、避けなくてはならないものとして語られるが、それは間違いで、その前段階の、「心を殺されている状態」こそが真に問題だろう(もちろん、自意識過剰や被害妄想によるカウンター殺害は別だよ)。

 ▽なお、私は「正義の独裁者・リーダーシップ」は認める、が、人間と言うのは弱いもので、完璧ではない、どこかで歪むから、それを制御する「周りの人」は必要。

 ▼そして、古市憲寿氏は、作中で、何度かこういうことを語る。

 例えば「コメ」……、お米が主食になったのは、ここ100年弱のことで、あたかも稲穂の田園風景が「日本の心の原風景」のように語るのはおかしい、などの意が語られる。

 また、一夫一妻制も、ここ数世紀に定まった話。

 江戸時代までは、同性愛も普通の恋愛のカタチとして存在していた……。

 これらが、現代の価値観を否定する形で語られる。

 それもちょっと違う(なんで「ちょっと」かと言うと、現在、米食や恋愛観のパラダイムシフトが起こっている時期でもあるからだ。俺は同性が嫌いだ、ついていけないが、そういう変化は認めざるを得ない)。

 それらが、短期間の間に、日本の生活様式に溶け込んだことこそが「伝統」であるという概念がないし、その過程を紐解くことこそが社会学であると思うのだが。

 ▼この古市憲寿って人は、『誰の味方でもありません』と言うタイトルの著作もあり、自分の考え方が、既存の思想の枠には入らないよ、と主張している人物のようだが、どうも、現在進行形の物事・個々の事例に対しては客観的な答えを出せるけど、その性根は左翼チックのようだ。

 また、既存の思想サイドには与しないとは言え、その主張はけして独創的ではない。

 でも、自分では、自分が斬新な孤高の言論者と思っているだろう。

 私はこれを「独創的言論指向症候群」と呼ぶ(20年以上前から、私は、こういうことを言い続けている^^;)。

 ▼また、神話の時代の国産みのエピソードを、まあ、多くの人が「神々のセックスで国が生まれた、ウキャキャ」と揶揄するのだが、古市憲寿氏も同じく記している。

 しかも、近親相姦だぁ、更にはヒルコを産んでる……。

 神話を科学的に解釈するのは野暮だが、人口の少ない古代においては自ずと近親婚が増えるし、しかし、ヒルコが産まれてしまったことを律儀に記録しているのは、後の世へのメッセージともなる。

 ▽イスラムの「コーラン」などでは、豚を食べることが禁じられているが、これも科学的に解釈するのは野暮だが、書かれた時代に、豚肉の半生を食って腹を壊すことが多かったからなんダヨ! と、昔 イラン人のハミドさんが言ってた。

 ▼この国産み神話は、日本独自のモノではなく世界に同様の神話はいっぱいあるぜ、ウキャキャ……、とも、古市憲寿氏は言っている。

 う~む、俺が「社会学者」だったら、その類似神話における地域での「差異」にこそ、その文化の特質があると睨んで研究対象とするのだがなぁ。

 また、もう二つ……、これは、俺、あんまし正しいとは思えずに書くんだけど、ただ、この問題を語るうえで、一行だけでも付記しておかなくてはならないから書く。

 ①同年代に、世界的に、同じような現象が同時多発的に発生することは往々にしてある。

 ②人類の始祖を突き詰めた時、その「個」の思考が、その後の人類の潜在意識に残り、その後の文化思考に影響を与えることもあろう。

 ▼……基本、いろいろ考えさせられ、『絶対に挫折しない日本史』は面白かった。

 てか、人気の古市憲寿氏の著作の感想を書けば、人の興味を惹くだろうと言う姑息な考えの俺^^;

                                (2021/12/08)


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