☆・・・師走の喧騒も落ち着く大晦日。
でも、東京は福生の、創業五年を迎える老舗「登呂歩屋」は問題を抱えていた。
『う~!』
社長のナカムラが右手を痙攣させていた。
『右手が痛くて、スライサーを押せないぃ~』
ここは、生ハム屋…、新年の各家庭、お節の食卓を彩る「生ハム盛り合わせ」を調理・販売を行なっているのだが・・・。
ゲンさん 『だから言ったじゃないですか。無理な受注を受けすぎて、受け渡しの時間に間に合わなかったらどうするんですか。お客様の信用を失って、老舗「登呂歩屋」を潰すことになってしまいますよ』
ナカムラ 『でもなぁ、ゲンさん、俺はサイゼリアに負けたくないんだよ。頑張るしかないんだよ。信じれば、きっと、夢はかなうんだよ。明けない夜はないんだよ。やまない雨はないんだよ』
ゲンさん 『うは、そのよくある表現、キモ・・・』
・・・しかし、ナカムラの右手は限界だった。
巨大な生ハムブロックを、スライサーの台の上で右手で押し出し滑らせる。
その微妙な押し出しで、生ハムは「シルクレイ」のような舌触りとなる。
何万回と押していくうちに、中村は「ミッドシップ押し法」を会得したが、腕に負担が掛からなくなるには、まだまだ何かが足りなかった・・・。
ゲンさん 『どうするんですか、社長、痛がっていても、店は回りませんよ・・・」
ナカムラは左手で右手を「モギモギ」と揉みほぐしながら、天井を仰ぎ見るのだった・・・。
(次回、感動の最終回。登呂歩屋vsサイゼリアの勝負の行方は!?)
(2018/01/01)