☆私は東京の23区外に住み、忙しく、もっぱらシネコンでしか映画を観れなくなっているのだが、
たまに、シネコンが「シネ魂」を見せてくれて、メジャー流通に乗らないミニシアター系の作品をひょっこりと公開してくれたりする。
『終着駅−トルストイ最後の旅−』が、<ワーナーマイカル・日の出>で公開されている。
「日の出」って知っとるか?
東京なのに、区でも市でもなく「町」なんだ。
もっとも、東京には「桧原村」もあるが・・・。
◇
私は、ロシアの文豪と言われるトルストイの作品は読んだことない。
ドストエフスキーは人並みに読み、ツルゲーネフも読んだ。
ツルゲーネフは、他の二人に比べ、ややスケールが小さく感じられようが、私にとっては、『父と子』などでの「ストレス」は、武者小路実篤作品的に強烈だったし、
最近読んだ小泉信三の講義録では、「(ツルゲーネフ)彼の小説を年代を追って読むと、あれはロシヤの社会運動史です」などと語られていました。
◇
さて、前段の文章は余談ではない^^
今回の映画は、トルストイの主要な作品が発表され、名声が高まった後のトルストイが、その思想を体現した運動をしていた晩年が描かれる。
そこには、武者小路実篤が影響されて作った「新しき村」のような共同体が描かれ、同時に、伯爵でもあったトルストイの夫人ソフィヤとの確執も描かれる。
その間を、トルストイの新しい秘書となったワランチンの、主義者としての純粋かつ真摯な思いが行き交う。
作品のテーマ性は広範囲で、読み込めば読み込むほど深いのだが、それは見る者の自己責任に委ねられ、
トルストイの、神格化された名声と、屈託ない人生、一族の長としての責任感、
妻・ソフィヤの夫婦間の当然の愛と、一族の繁栄への思い、
トルストイ主義者のリーダー・チェルトコフの、トルストイを民衆の英雄に仕立てたいと願う純粋な思いのエゴへの変異、
ワランチンの、敬愛するトルストイの進むべき道理を見極めたい態度と、「悪妻」とチェルトコフに吹き込まれたソフィヤに対しての心境の変化、
厳格な主義者の村で奔放に性を貪る、後にワランチンと恋仲になるマーシャ、
・・・と、見る者の立場で、考える対象が異なる。
うん、レーニンも愛読したトルストイの、共産党前夜の思想も垣間見られる。
◇
私は、やはり、主人公の若き秘書・ワランチン(ジェームズ・マカヴォイ)に感情移入した。
マーシャ(ケリー・コンドン)に夜這いをかけられ、その「嫌らしい目元」「美しく眼前に実る乳房」に夢中になり、また、ちょっと冷たくされた時には、なんか、『父と子』のようなストレス展開があるのかとドキドキした(・・・その心配はなかった)。
トルストイ(クリストファー・プラマー)については、わりと理解しやすい性格なのだが、
「世界三大悪妻」とも言われているそうなソフィヤについては、演じるヘレン・ミラン、難しい演技を強いられたと思う。
だが、ヘレン・ミランは、その魅力と、納得できる道理と、社会から受けよう誤解を、見事に理解させてくれる名演技をかましてくれている。
ヘレン・ミラン・・・、可愛いおばあちゃん^^ 『RED』に続いての好演である。
もちろん、脚本の勝利でもある。
◇
このような作品を見ると、「老人の達観」と「若気の至り」は、周囲を惑わせるにおいては同根だなと思うのだ・・・。
(2011/01/24)
たまに、シネコンが「シネ魂」を見せてくれて、メジャー流通に乗らないミニシアター系の作品をひょっこりと公開してくれたりする。
『終着駅−トルストイ最後の旅−』が、<ワーナーマイカル・日の出>で公開されている。
「日の出」って知っとるか?
東京なのに、区でも市でもなく「町」なんだ。
もっとも、東京には「桧原村」もあるが・・・。
◇
私は、ロシアの文豪と言われるトルストイの作品は読んだことない。
ドストエフスキーは人並みに読み、ツルゲーネフも読んだ。
ツルゲーネフは、他の二人に比べ、ややスケールが小さく感じられようが、私にとっては、『父と子』などでの「ストレス」は、武者小路実篤作品的に強烈だったし、
最近読んだ小泉信三の講義録では、「(ツルゲーネフ)彼の小説を年代を追って読むと、あれはロシヤの社会運動史です」などと語られていました。
◇
さて、前段の文章は余談ではない^^
今回の映画は、トルストイの主要な作品が発表され、名声が高まった後のトルストイが、その思想を体現した運動をしていた晩年が描かれる。
そこには、武者小路実篤が影響されて作った「新しき村」のような共同体が描かれ、同時に、伯爵でもあったトルストイの夫人ソフィヤとの確執も描かれる。
その間を、トルストイの新しい秘書となったワランチンの、主義者としての純粋かつ真摯な思いが行き交う。
作品のテーマ性は広範囲で、読み込めば読み込むほど深いのだが、それは見る者の自己責任に委ねられ、
トルストイの、神格化された名声と、屈託ない人生、一族の長としての責任感、
妻・ソフィヤの夫婦間の当然の愛と、一族の繁栄への思い、
トルストイ主義者のリーダー・チェルトコフの、トルストイを民衆の英雄に仕立てたいと願う純粋な思いのエゴへの変異、
ワランチンの、敬愛するトルストイの進むべき道理を見極めたい態度と、「悪妻」とチェルトコフに吹き込まれたソフィヤに対しての心境の変化、
厳格な主義者の村で奔放に性を貪る、後にワランチンと恋仲になるマーシャ、
・・・と、見る者の立場で、考える対象が異なる。
うん、レーニンも愛読したトルストイの、共産党前夜の思想も垣間見られる。
◇
私は、やはり、主人公の若き秘書・ワランチン(ジェームズ・マカヴォイ)に感情移入した。
マーシャ(ケリー・コンドン)に夜這いをかけられ、その「嫌らしい目元」「美しく眼前に実る乳房」に夢中になり、また、ちょっと冷たくされた時には、なんか、『父と子』のようなストレス展開があるのかとドキドキした(・・・その心配はなかった)。
トルストイ(クリストファー・プラマー)については、わりと理解しやすい性格なのだが、
「世界三大悪妻」とも言われているそうなソフィヤについては、演じるヘレン・ミラン、難しい演技を強いられたと思う。
だが、ヘレン・ミランは、その魅力と、納得できる道理と、社会から受けよう誤解を、見事に理解させてくれる名演技をかましてくれている。
ヘレン・ミラン・・・、可愛いおばあちゃん^^ 『RED』に続いての好演である。
もちろん、脚本の勝利でもある。
◇
このような作品を見ると、「老人の達観」と「若気の至り」は、周囲を惑わせるにおいては同根だなと思うのだ・・・。
(2011/01/24)