☆・・・こりゃ、傑作でした。
『ゼロ・グラビティ』の宇宙と対をなす、海洋の水平線の物語でした。
主人公の男はロバート・レッドフォードで、唯一無二の出演者である。
セリフもほとんどない。
そもそもがヨットで一人旅に出ていたのである。
そして、海洋で事故に遭い、インド洋のド真ん中を彷徨うことになる。
そのシミュレートされた世界が作品として面白い。
漂流コンテナと激突し、ヨットが浸水、密室で海水にまみれ、壁の破損をロープに吊られながら修繕、マストの頂点にも上りソケットを入れなおす。
この辺の平面の海洋を立体的に見せる演出は見事。
無線は水浸しで使い物にならなくなる。
主人公は、マニュアル通りに危機をいなそうとする。
セリフはないが、主人公が何をしようとしているのかは何となく視察できる。
嵐に巻き込まれ、船はグルングルンと回転、嵐の中に躍り出て、対嵐用の覆いをしようとするも、海に投げ出される始末、命綱があるのでヨットに帰還。
嵐は去るも、船は沈みゆき、僅かな水・食料とサバイバルキットを持って救命ボートへ、後は海流に乗って漂うのみ。
タンクの水は塩水と混ざり合い、食べ物は底をつき、タンカーが2隻も近くを航行していくが、発煙筒を焚くも気づかれない・・・。
日光は照りつけ、主人公は体力も気力もなくしていく・・・。
嵐は何度も遅い来る。
嵐の中、救命ボートは裏返しになり、主人公は海に躍り出て、元に戻す。
老境に入ったレッドフォードは扮する主人公は、そもそもが、身体を動かすに際し、プロレスラーの如く、「ヨッコラショ!」みたいにワンテンポ間をおいて動き出すのに、そんな主人公には酷な受難の数々。
海は青く、魚たちが日々の営みを継続させている。
グタッと船に横たわる主人公の唯一の期待は、数時間に一度の、海水から蒸留した水の補給である。
もう、主人公は、サバイバルキットなどのマニュアルに則して、律儀にサバイバル術を駆使していく。
そのマニュアル人間振りこそが、主人公の人生を侵し、家族を見返ることなく、大海原に一人でヨット航海に出るという危険さに身を置くに至ったのだろう。
最後の最後まで、主人公は死を回避しようとする・・・。
が、最後に、主人公はビンに手紙を託し、死を覚悟する。
だが、最後に、マニュアル無視の自爆的な行為をする。
そして開ける主人公の運命は・・・?
(2014/06/29)